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映画「ABATOR」から考える政治のあり方(産経新聞)
- 2010.05.26 Wednesday
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- 18:53
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- by 50oas5a2bw
【高橋昌之のとっておき】
先日、DVDを借りて、映画「ABATOR(アバター)」を見ました。さすがに世界興行収入歴代1位になるだけの名作だと思いつつ、政治のあり方についても考えさせられることがありましたので、今回はそれをテーマに書きたいと思います。
ABATORの舞台は西暦2154年。地球人はパンドラという衛星で、地球のエネルギー問題を解決するため、希少鉱物アンオブタニウムの採掘を企てました。しかし、パンドラには原住民のナヴィがおり、アンオブタニウム採掘には、その鉱床の上で生活しているナヴィを立ち退かせる必要がありました。
ただ、地球人はパンドラの大気では呼吸ができないため、地球人とナヴィの遺伝子を組み合わせたアバターという肉体を作って遠隔操作し、ナヴィとの交渉にあたらせることにしました。その操縦者に指名された1人が、主人公で元海兵隊員のジェイク・サリーで、ジェイクはアバターを操縦し、ナヴィとともに生活し、信頼関係を築いて交渉を成功させようとします。
しかし、ナヴィの生活に溶け込むうちに、自然と共生しながら生活を営むナヴィにひかれていきます。一方、アンオブタニウムを得るために強引にナヴィに立ち退きを迫る地球人のやり方に対しては、疑問を感じ始め、交渉に入れずにいました。
それにいらだった地球人組織のトップは、ナヴィを軍事力で強制的に排除する策に打って出ます。ジェイクはそれによる悲劇を避けるため、ナヴィに立ち退くよう説得しますが、ナヴィは応じず、地球人は強制排除を開始し、ナヴィとの戦争が始まってしまう…。結末は映画をごらんになってのお楽しみです。
ABATORを見てまず感じたことは、話し合いによって問題を解決する、つまり、外交、政治の重要性です。ジェイクは戦争による犠牲者を出さないため、ナヴィの説得を試みますが、人間が決着を急ぐ一方、ナヴィもかたくなな姿勢を崩さなかったため、戦いが始まり、ナヴィ、地球人ともに多くの犠牲者を出してしまいます。
私は「もし話し合いで解決していたら…」と思ってしまいましたが、それでは映画にはならないかもしれませんね。ただ、映画から私たちが学ぶべき点があるとすれば、対立や争いではなく、話し合い(外交・政治)で問題を解決することの重要性です。
アンオブタニウムは地球人にとって必要ですが、ナヴィには必要ないものです。信頼関係を築き、話し合いで双方にとってより良い選択を見いだすことができていたら、犠牲者を出さずに問題は解決できたかもしれません。
そこで、ふと思い浮かんだのが、現在、日本の政治の最大の焦点となっている普天間飛行場移設問題です。日本政府としては、米国との間で合意できる案で決着させなければなりませんし、沖縄県民にとっては、米軍基地の負担を可能な限り軽減してほしいという思いがあります。
鳩山由紀夫首相が決着の期限として明言してきた5月末が近づいていますが、まだ決着のメドは立っていません。しかし、私は政府、沖縄県民の双方が信頼関係を築き、国にとっても沖縄県にとっても、よりよい選択をしようという観点に立つことができれば、決着は可能だと思っています。
そのためには、政府は沖縄県内に移設先を求めるのであれば、沖縄県民にとって「苦渋の決断」であることを理解し、ぎりぎりまで話し合いの努力をし、誠意を尽くすしかありません。一方、沖縄の方々には、この問題が日米関係、日本の安全保障という国益のかかった問題であることを理解していただき、何よりも「最も危険な基地」と言われる普天間飛行場の移設実現を、最優先に考えてほしいと思います。
問題が決着しなければ、普天間飛行場は残り続けることになりますし、日米関係は信頼関係が崩れ、悪化するのは間違いありません。結果的には国も沖縄県も双方が禍根を残すことになるのです。だからこそ、政府と沖縄の方々はともに、かたくな態度をとって感情的に対立してしまうのではなく、よりよい道を見いだそうという高い見地に立って、何とか決着させてほしいと思うのです。それこそ「政治の知恵」というものだと思います。
話は変わって、もうひとつAVATORを見て感じたことは、人類が自然と共生することの大切さです。AVATORで描かれているのは、文明を極めた結果、自然を破壊してでも豊かであり続けようとする人類と、自然と共生し、自然がもつ神秘を受け入れて生活を営む原住民のナヴィの姿の対比です。
人類の歴史は、文明を手にして以来、自然をいかに征服するかに身を砕いてきた歴史といっていいのではないかと思います。しかし、私は人間が自然を征服することはできないし、仮にできたとしたら、それは同時に自然の一部である人類の破滅を意味すると考えています。
その弊害はすでに地球温暖化や公害などといった現象で表れています。さらに、人間は文明という物質的な豊かさを追い続ける余り、最も重要な精神的な豊かさ、たとえば家族のきずな、人間関係、道徳観といったものが失われ、その結果、人間社会の根幹も崩壊しつつあるように思えてなりません。
ですから、私は今こそ、人間は物質的な豊かさだけでなく、自然との共生や精神的豊かさを取り戻す必要があると思います。しかし、私もそうですが、多くの方々はそれに気づいていても、具体的に何をどうしたらいいのか、よく分からないのではないでしょうか。個人の努力はもちろん必要ですが、それだけでなかなか変わるものではありません。やはり社会全体としてあり方を見直していく必要があります。
その方向性と具体的な施策を示し、リーダーシップをとる役割を担っているのは「政治」です。もちろん、一朝一夕に成果が出る容易なテーマではありません。時間はかかると思います。しかし、スタートを切るのはもう遅いぐらいで、今スタートしなければ、私たちはもちろん、子供やその子孫たちに、よりよい社会を引き継ぐことはできません。
具体策はいろいろあると思いますが、政治がその方向に向かって動き出せば、社会は必ず変わります。鳩山政権は直面する個別の政策課題で手いっぱいかもしれませんが、それだけにとらわれず、ぜひ大きな視野に立って社会の変革に取り組んでもらいたいと思います。
また、夏には参院選があります。与野党各党はマニフェスト(政権公約)に、日本をどういう社会にしていくのかという大きな絵を描き、そのうえで具体的な政策はこうするということを打ち出すべきです。日本をよりよい社会にするための変革が始まるかどうか、それは与野党各党、つまり政治が動き出すかどうかにかかっているのです。
【関連:高橋昌之のとっておき】
・ 沢尻エリカと小沢一郎(上)共通点にみる大物感
・ 普天間問題、足を引っ張り合っている場合じゃない
・ 各党は参院改革を公約に 「政争の府」から「良識の府」へ
・ 普天間決着、実現可能な案はこれしかない!
・ 自民党崩壊の始まり?保守再生へ大胆な提案
・ 献血啓発補助金を不正受給 大阪交野・和泉両市 推進協が虚偽報告(産経新聞)
・ JR新車両から部品落下(産経新聞)
・ <火災>長屋全焼 住人の69歳女性?死亡 さいたま(毎日新聞)
・ 仕分け第2弾終了、37事業「廃止」求める(読売新聞)
・ 「親族優先」初適用 亡夫の角膜移植へ(産経新聞)
先日、DVDを借りて、映画「ABATOR(アバター)」を見ました。さすがに世界興行収入歴代1位になるだけの名作だと思いつつ、政治のあり方についても考えさせられることがありましたので、今回はそれをテーマに書きたいと思います。
ABATORの舞台は西暦2154年。地球人はパンドラという衛星で、地球のエネルギー問題を解決するため、希少鉱物アンオブタニウムの採掘を企てました。しかし、パンドラには原住民のナヴィがおり、アンオブタニウム採掘には、その鉱床の上で生活しているナヴィを立ち退かせる必要がありました。
ただ、地球人はパンドラの大気では呼吸ができないため、地球人とナヴィの遺伝子を組み合わせたアバターという肉体を作って遠隔操作し、ナヴィとの交渉にあたらせることにしました。その操縦者に指名された1人が、主人公で元海兵隊員のジェイク・サリーで、ジェイクはアバターを操縦し、ナヴィとともに生活し、信頼関係を築いて交渉を成功させようとします。
しかし、ナヴィの生活に溶け込むうちに、自然と共生しながら生活を営むナヴィにひかれていきます。一方、アンオブタニウムを得るために強引にナヴィに立ち退きを迫る地球人のやり方に対しては、疑問を感じ始め、交渉に入れずにいました。
それにいらだった地球人組織のトップは、ナヴィを軍事力で強制的に排除する策に打って出ます。ジェイクはそれによる悲劇を避けるため、ナヴィに立ち退くよう説得しますが、ナヴィは応じず、地球人は強制排除を開始し、ナヴィとの戦争が始まってしまう…。結末は映画をごらんになってのお楽しみです。
ABATORを見てまず感じたことは、話し合いによって問題を解決する、つまり、外交、政治の重要性です。ジェイクは戦争による犠牲者を出さないため、ナヴィの説得を試みますが、人間が決着を急ぐ一方、ナヴィもかたくなな姿勢を崩さなかったため、戦いが始まり、ナヴィ、地球人ともに多くの犠牲者を出してしまいます。
私は「もし話し合いで解決していたら…」と思ってしまいましたが、それでは映画にはならないかもしれませんね。ただ、映画から私たちが学ぶべき点があるとすれば、対立や争いではなく、話し合い(外交・政治)で問題を解決することの重要性です。
アンオブタニウムは地球人にとって必要ですが、ナヴィには必要ないものです。信頼関係を築き、話し合いで双方にとってより良い選択を見いだすことができていたら、犠牲者を出さずに問題は解決できたかもしれません。
そこで、ふと思い浮かんだのが、現在、日本の政治の最大の焦点となっている普天間飛行場移設問題です。日本政府としては、米国との間で合意できる案で決着させなければなりませんし、沖縄県民にとっては、米軍基地の負担を可能な限り軽減してほしいという思いがあります。
鳩山由紀夫首相が決着の期限として明言してきた5月末が近づいていますが、まだ決着のメドは立っていません。しかし、私は政府、沖縄県民の双方が信頼関係を築き、国にとっても沖縄県にとっても、よりよい選択をしようという観点に立つことができれば、決着は可能だと思っています。
そのためには、政府は沖縄県内に移設先を求めるのであれば、沖縄県民にとって「苦渋の決断」であることを理解し、ぎりぎりまで話し合いの努力をし、誠意を尽くすしかありません。一方、沖縄の方々には、この問題が日米関係、日本の安全保障という国益のかかった問題であることを理解していただき、何よりも「最も危険な基地」と言われる普天間飛行場の移設実現を、最優先に考えてほしいと思います。
問題が決着しなければ、普天間飛行場は残り続けることになりますし、日米関係は信頼関係が崩れ、悪化するのは間違いありません。結果的には国も沖縄県も双方が禍根を残すことになるのです。だからこそ、政府と沖縄の方々はともに、かたくな態度をとって感情的に対立してしまうのではなく、よりよい道を見いだそうという高い見地に立って、何とか決着させてほしいと思うのです。それこそ「政治の知恵」というものだと思います。
話は変わって、もうひとつAVATORを見て感じたことは、人類が自然と共生することの大切さです。AVATORで描かれているのは、文明を極めた結果、自然を破壊してでも豊かであり続けようとする人類と、自然と共生し、自然がもつ神秘を受け入れて生活を営む原住民のナヴィの姿の対比です。
人類の歴史は、文明を手にして以来、自然をいかに征服するかに身を砕いてきた歴史といっていいのではないかと思います。しかし、私は人間が自然を征服することはできないし、仮にできたとしたら、それは同時に自然の一部である人類の破滅を意味すると考えています。
その弊害はすでに地球温暖化や公害などといった現象で表れています。さらに、人間は文明という物質的な豊かさを追い続ける余り、最も重要な精神的な豊かさ、たとえば家族のきずな、人間関係、道徳観といったものが失われ、その結果、人間社会の根幹も崩壊しつつあるように思えてなりません。
ですから、私は今こそ、人間は物質的な豊かさだけでなく、自然との共生や精神的豊かさを取り戻す必要があると思います。しかし、私もそうですが、多くの方々はそれに気づいていても、具体的に何をどうしたらいいのか、よく分からないのではないでしょうか。個人の努力はもちろん必要ですが、それだけでなかなか変わるものではありません。やはり社会全体としてあり方を見直していく必要があります。
その方向性と具体的な施策を示し、リーダーシップをとる役割を担っているのは「政治」です。もちろん、一朝一夕に成果が出る容易なテーマではありません。時間はかかると思います。しかし、スタートを切るのはもう遅いぐらいで、今スタートしなければ、私たちはもちろん、子供やその子孫たちに、よりよい社会を引き継ぐことはできません。
具体策はいろいろあると思いますが、政治がその方向に向かって動き出せば、社会は必ず変わります。鳩山政権は直面する個別の政策課題で手いっぱいかもしれませんが、それだけにとらわれず、ぜひ大きな視野に立って社会の変革に取り組んでもらいたいと思います。
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